連載 11 疲労について 楽しい時にはなぜ疲れを感じないか
疲れの不思議なところは、同じことをやっていても、自分が楽しい時にはあまり疲れを感じない点です。実際、積極的な意思を持って何かをしている時、人間の生理機能は向上するのです。
疲労感は、大脳辺縁系が視床下部の指令を受信することで自覚されます。
一方、活動意欲は、大脳皮質が情熱をもって取り組むに足ると判断した上で大脳辺縁系に指令を伝えることで自覚されます。つまり大脳辺縁系は対立する二つの自覚を処理しているわけで、活動意欲が高まれば必然的に疲労感は減少することになります。
それに対して、いやいや仕事をしていると、生理的疲労に精神的疲労が重なって疲労感が増大します。しかも疲労の回復も遅くなるため、もう一度同じ仕事をするときに、ますます嫌悪感が強くなるという悪循環に陥ってしまいます。
現代人の疲労の80%は精神的疲労だといわれていますが、これを裏返せば、どんなことでも楽しみながらすることで、疲労感は大きく軽減されるということになります。
疲労回復にはビタミンBが必要
疲労回復のための食物としては、夏バテ予防の土用のウナギやニンニク、マムシ酒など様々なものがもてはやされています。栄養素の欠乏による生理的な疲労の場合、不足した栄養素を補給すればよいわけですから、一概にどんな食べ物がよいとはいえません。
疲れたときに必ず消耗しているのは活動のためのエネルギーとなる炭水化物ですが、これは通常の食事で十分に補給できるので、とりたてて神経質になることはないでしょう。むしろ注意したいのは、代謝活動の仲介役となるビタミンです。
とくにビタミンB群は、炭水化物をエネルギーに変えたり、神経の働きを整える役割を果たしているので、これが不足すると、てきめんに疲労を感じるようになります。
また、ビタミンB群は、腸の粘膜を保護すると同時に、肝臓の機能を円滑にする働きもあるので、アルコールによる吸収不良や肝機能の低下が心配な方には欠かせません。
ビタミンB群を豊富に含む食べ物としては、胚芽米や大豆・サバ・シジミ・牛乳などが上げられます。水溶性ビタミンなので過剰摂取の心配はないですが、反面、常に補給しておかないと不足してしまいます。